【町内向け】山車の装飾とは?【漆・彩色・金具・彫刻・幕】
山車の装飾について知りたい人
「山車の装飾について知りたい。」
「町内の山車の装飾について悩んでいる。」
「それぞれの装飾をどの専門家に相談するべきか、知りたい。」
こういった方向けに執筆しています。
✓ このページの内容
- 山車の装飾について分かる。
- それぞれの装飾の専門家が誰か、分かる。
- 装飾について相談する方法が分かる。
この記事を書いているマルスエでは、漆塗りの伝統工芸士が二名在籍しています。
その技術を活かして、平成24年岐阜県大垣祭りの「相生軕」復元・漆塗り工事をはじめ、今まで10台以上の山車の塗りに携わってきました。
また、専門職人との横の繋がりを活かして、金箔や彩色を施す、彫刻や金具・天幕を作成するなど、山車のトータルコーディネートも請け負っております。
今回は、「山車の装飾」を、それぞれ分解して解説しています。
この記事を読めば、「山車の装飾の種類」と「誰に頼むか?」が分かるように執筆しています。
町内の山車製作や修復の担当者のお悩みを解決できれば、幸いです。
*記事は3分ほどで読み終わります。詳しい解説は詳細リンクを貼っておきました。
山車の装飾の種類
山車の装飾は、
- 山車本体に施工する装飾
- 追加するタイプの装飾
の大きく2つに分かれます。
本体に施工する場合、解体が必要になる場合があり、その場合は山車に詳しい宮大工の協力が必要になります。
例えば、山車を塗る場合、基本的に解体が必要+塗りで生まれる厚みを削る必要が生まれ、宮大工と塗師の共同作業が必要です。
反面、金具を追加する場合は、現在の山車から型を取って製作→取り付けをするだけなので、錺金具師のみで製作が可能になります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
山車本体に装飾するもの
塗り
木を保護するため、また加飾をするためのベースになります。
山車は木造がメインなので、塗った方が長持ちします。
また、箔・蒔絵を行う場合は漆などを塗ったベースが必要になります。
彩色を行う場合も、下地施工が必要です。
手塗りの漆によるものから、吹付けのウレタンまでさまざまな仕上げがあります。
また、塗り自体に加飾性が高いもの(変わり塗り)という塗り方もあります。
詳しくは:【町内向け】山車漆塗りのガイドライン【伝統工芸士が解説】
箔・蒔絵・彩色
塗りの上に施工する装飾です。
加飾と言われることも。
塗りは変わり塗りを除くと「単色」なので、それらを彩る加飾技術になります。
*彩色は例外的に、「木地彩色」と言って、木地に直接彩色を施す場合もあります。
蒔絵と彩色の違いって?
彩色…主に膠を使う。山車の場合、「彫刻に魂を入れる」ような装飾がメイン。天井絵など、メインとして描かれることもある。
ざっくりですが、上記の違いがあります。
山車に追加する装飾
彫刻
山車の装飾の中で、最も目立つ「装飾の主役」といえます。
他の加飾と比べ、彫刻の名の通り、最も立体的な装飾です。
金具
金具は機能性+装飾性の両面を持ちます。
部材同士をつなぎ合わせたり、木造である山車を保護する「バンパー」のような機能性が、金具の元々の役割です。
ですが、切った鉄板を付けるだけでは、風情がありませんよね。
そこで、鏨(たがね)を使って柄を入れたり、金メッキなどを施して装飾性を高めているのが、錺金具の特徴です。
機能性と装飾性をうまく両立させています。
天幕(山車幕)
山車幕は山車を覆う、巨大なキャンパスです。
有名画家の絵画を、刺繍という技術で、立体感をもった表現力を加えます。
山車の装飾の専門職人
塗りと加飾(箔置き・彩色・蒔絵)
木地彩色を除くと、箔置き・彩色・蒔絵の加飾は、塗りをベースに行われるので、塗師が窓口を請け負います。
また、解体を伴うこともあり、山車造りの得意な宮大工が窓口を請け負います。
重要なのは、専門職人同士の潤滑なコミュニケーションが、品質を大きく左右するところです。
「塗りごとに、塗りの厚みを計算し、塗代(ぬりしろ)を削る」
塗師×箔押師、蒔絵師
「ベースは何で塗って、どんな材料で加飾するか?」
塗師×彩色師
「下地はどのように行い、どのような絵の具を使うか?」
上記の連携は一朝一夕では身に付かず、品質に大きく関わる部分です。
オススメ業者
- 横のつながりの広い、山車が得意な宮大工
- 文化財や大きなものを取り扱う塗師、箔押師、彩色師、蒔絵師
*宣伝ですが、マルスエでは文化財修復のほか、神社仏閣などおおきなものを扱うのを得意としております。
ぜひ、ご相談ください。
詳しくは:マルスエの山車塗り
彫刻
「山車彫刻」という、独自の文化があり、専門性の高い彫刻です。 なので、専門職人に依頼するのがオススメです。
山車は「見上げるもの」です。
山車彫刻は斜め下から見上げた箇所が正面になりますので、山車彫刻師の設計には緻密な計算があります。
また、山車は龍や獅子など、架空の生き物が登場するなど、「和の世界観」を演出するものです。
この世界観を表現するのは本当に奥が深く、歴史が長いです。
波が代表的な「伊八」や、木目を最大限活かした「立川流」などが有名で、現代の山車彫刻も、それらをルーツに研究されています。
オススメ業者
- 山車彫刻の専門家、山車彫刻師
- 神社仏閣の大きな彫刻を手掛ける、宮彫師
金具
錺(かざり)金具は錺金具師
板金は板金職人に依頼します。
錺金具は鏨(たがね)を使い、
- 金具に柄を付ける
- 切り抜く技法(透かし彫り)
- 一枚の地金を超立体的に造る地彫り(じぼり)
などの技法があります。
*型に流し込む「電気鋳造」や、機械で造る「プレス金具」など、安価なものもあります。
板金は、神社仏閣の屋根銅板がイメージしやすいと思います。
板金職人は、銅板を自在に加工する技術を持っています。
オススメ業者
- 錺金具…大きなもの(神社仏閣など)を取り扱う錺金具師、地彫り師
- 板金…大きなもの(神社仏閣など)を取り扱う板金職人
天幕など
天幕などの山車幕は、織物・刺繍の職人が請け負います。
山車幕を専門に作っている業者はあまりなく、祭り半纏や人形衣装などを造る織物職人や、お仏壇やお寺の打敷(うちしき)を製作する刺繍職人が製作している場合が多いです。
オススメ業者
- 山車幕に対応している織物職人、刺繍職人
誰に相談する?それぞれのメリット・デメリット
工務店に依頼する場合
メリット
- 山車の構造を一番熟知しているので、安心感がある。
- 専門職人を手配してくれるので、手間いらず。
デメリット
- 間接依頼になり、細かい要望が実現できないこともある。
- 中間マージンが発生する。
家を建てるときに例えると、工務店やハウスメーカーにお任せするイメージですね。
専門職人に依頼する場合
メリット
- 直接依頼なので、満足度・依頼の再現度が高い。
- 余計な中間マージンが発生せず、コスパが良い。
デメリット
- トータルのデザインを考えないと、チグハグなデザインになるリスクがある。
- 複数の加飾をする場合は、打ち合わせの手間が掛かる。
家を建てるときに例えると、「施主施工」「施主支給」という考え方が近いですね。
記事のまとめ
- 山車本体を塗りをベースに装飾する方法
- 彫刻や金具・山車幕など、追加する装飾方法
- 本体の装飾は解体が必要な場合がある。
- 追加する装飾は、解体が不要。
- 工務店などの大きな窓口か、各専門職人に直接相談する方法がある。
上記のとおりです。
お祭りの山車は地域や歴史によって、形も違えば装飾方法もさまざまです。
また、「町内のシンボル」=「みんなのもの」という考え方があり、
本来、好みが分かれる装飾について悩まれる町内も多いように思います。
そんな時は、専門家に相談して提案を貰いつつ、予算を立てていけると理想ですね。
マルスエでは、専門である塗りの分野の他、横の繋がりを活かして専門職人のご紹介もしておりますので、お困りの際は気軽にお問い合わせください。