【なぜお仏壇を買うのか?】お仏壇の役割【必要性や意味を解説】
✓ 本記事の内容
- お仏壇を置く意味が分かる
- 仏教の考え方が分かる
- 番外編・宗教の話
この記事を書いている僕は仏壇職人歴13年です。
なぜ仏壇職人をしているかというと、実家が仏壇屋で、跡を継いだからです。
小さなお店ですが、僕で4代目の仏壇屋になります。
家業を継いだ経歴は、職人仕事が楽しかったことです。主にうるしを研究してきました。
ですが、同時に「こんなに高いお仏壇を、なぜ人は買うのだろう」と考えたことがありました。
製造に夢中になっている自分とは別に、お仏壇という商品に、疑問を感じる自分がいるような感じです。
ですが、最近は仏教を勉強し直して、お仏壇の意味について深く考えるようになりました。
そんな経験から、今回は「お仏壇の意味」について解説していきます。
お仏壇を置く意味
お仏壇を置く理由は、長い歴史と時代の変化で、改めて考えられているテーマです。
これまでは、ご先祖さまを祀る専用の部屋をわざわざ設けるほど、お仏壇は大切であたりまえとされてきました。
もちろん、これまでの考えに沿って、納得して購入される場合、問題はありません。
問題は、
「親世代は購入&修復したい」
「子供世代は必要性を感じない」
「夫婦間で必要性に差がある」
というようなケースです。
マルスエ佛壇のお客さまでも、過去に以下のようなケースがありました。
定年を迎えたばかりの、65歳の男性のお客さまがいらっしゃいました。
そのお客さまは、3尺7寸の「大仏」と言われる、大きなお仏壇をいつか洗濯したい、という想いがあり、年度末の定年を期に、4月上旬にご来店いただき、お洗濯の要望を頂きました。
しかし、40歳で、現役世代の、お客さまの息子さんは、お仏壇のお洗濯に否定的でした。
「そんなにお金をかけて直した後、この大きなお仏壇を維持できるのか?」
お二人の要望をよく聞いた上で、一度洗濯すると新品同様になること・数十年はそのままお使い頂けることをお話して、無事ご納得が得られました。
逆に「やるからには、親父に後悔のないように」と、漆をメインにした上等な仕上げで、ご依頼を頂くことができました。
上記の例は、お客さまと息子さんのギャップを埋めることが出来て、両者共に満足いただけた例なので、よかったのですが、残念ながらそうならない場合もあります。
世代間の死生観や幸せなどの価値観のギャップが原因である、と本記事では考えます。
かつては大切にされてきた、お仏壇のエッセンスを分解して分かりやすく解説します。
また、本記事は少し長いため、先にまとめを書いておきます。
- お仏壇の一番の役割は「いつでも素の自分になって、自分と対話するアイテム」です。
- お仏壇を置くのは仏教の信仰のため。そして、仏教はメンタルヘルス向上に貢献します。
- 自分があるのはご先祖様のお陰なので、感謝の気持ちを込めてご位牌を置きます。
記事を読んで頂いた後に、お仏壇について考える時の判断材料にして頂けると幸いです。
お仏壇の役割〜先祖供養がメインではない!?〜
お仏壇の役割は、心の健康のため、といえます。
これでは抽象的で、分かりづらいかもしれません。
具体的には、「いつでも素の自分になって、自分と対話するアイテム」です。
お仏壇は仏様に手を合わせるために置きます。
なぜ仏様に手を合わせるかというと、「悟りを開くため」です。
「悟りを開く」なんだかスゴそうですが、要するに、ストレスフリーになる、という感じです。
参考外部リンク:「意識時空間」という概念装置-悟りの状態を簡単に体験する方法|七沢 智樹|note *「悟り」をとてもロジカルに解説されていて参考になる記事です。ご興味があれば、併読ください。
人それぞれ、色々な立場があり、なかなか本当の自分を冷静に見つめ直す場面は少ないですよね。
例えば、これを書いている僕は、四児の父であったり、漆塗り職人だったり、お仏壇ブログの記者という立場があったりします。
お仏壇の一番の役割は「いつでも素の自分になって、自分と対話するアイテム」です。
なんと、お仏壇は先祖供養がメインではないんですね。
先祖供養と言われる理由
仏教の考え方で因果関係を大切にする、という考え方があります。
「自分がいるのは、○○のおかげさま」
そのような考え方から、先祖供養のため、という考えが広まったようです。
お仏壇を置くようになった歴史
お仏壇の歴史は長く、一番古いお仏壇と言われているのは法隆寺の「玉虫厨子」です。
「教科書で見たことある!」という方も多いかもしれません。
その頃の庶民は生活に忙しく、「心の健康」を考える余裕がなかったので、偉い人のためのアイテムでした。
「厳しい戒律を守り膨大な経典を学んだ者」
「寄進をして功徳を積んだ者」
そんな人は救われる、という時間とお金のある偉い人向けの宗教だった、という感じですね。
鎌倉時代から、鎌倉仏教という庶民のための仏教が広まります。
その後、乱世になると、庶民のストレスが膨らむのと比例して、浄土真宗のような「分かりやすい仏教」が広まります。
(今で言う、コロナによる自己啓発ブームのようなものでしょうか?)
江戸時代にキリシタン禁制という政治的な理由から、檀家制度が出来て、一世帯ごとにお仏壇を置くようになったと言われています。
仏教がメジャーになった理由
仏教は「心の病の予防接種」だと思います。
なぜかというと、人生で悩みそうなポイントの対処法を、あらかじめ教えてくれるのが、仏教だからです。
仏教には、悩み・オブ・ザ・ベストが4つあるよ、という考え方があります。
- 生苦…生まれることに関連する苦しみ(生きてる意味を考えたり、などですかね)
- 老苦…老いることに関連する苦しみ。老いると体力、気力が衰えるという悩み
- 病苦…病気に関連する苦しみ。痛みや、苦しみに悩まされる問題
- 死苦…死ぬことへの恐怖、その先の不安
以上は「四苦」と呼ばれています。
そこにさらに4つ、これも要注意ですよ、とも教えています。
- 愛別離苦(あいべつりく)…
愛するものと別れること(死別、離婚、失恋) - 怨憎会苦(おんぞうえく)…
恨んでいる人と会うこと(苦手な上司、嫌いな友達、不仲の嫁・姑など) - 求不得苦(ぐふとくく)…
求めるものが得られないこと。欲が満たされないこと(お金、恋人、出世、個性の悩み など) - 五蘊盛苦(ごうんじょうく)…
人間のもつ肉体と心はすべて苦であること(これだけ見るとショッキングですね…!)
少し概念が難しいので、分かりやすい解説: すべてが苦だ 五蘊盛苦(ごうんじょうく) | 蓮和尚ブログと みんなの蓮 生蓮寺
以上の8つを「四苦八苦」と、仏教では定義しています。
僕はお坊さんではないので、説法はできませんが、ある程度人生経験のある方なら「たしかに」と思う八苦かと思います。
「悩み」を仮定して、「対策」を考えておく、科学的で、合理的なアプローチですよね。
人間の特性上、悩みがちなポイントに焦点をあてて、解決策をまとめているので、心の「備えあれば憂いなし」という感じです。
また、高齢者ほどお仏壇にこだわったり、宗教観が強いイメージがあるのは「老」「病」「死」を考える機会が多く、身をもって体験しているのが原因なのかもしれません。
お仏壇を置く意味まとめ
- お仏壇の一番の役割は「いつでも素の自分になって、自分と対話するアイテム」です。
- お仏壇を置くのは仏教の信仰のため。そして、仏教はメンタルヘルス向上に貢献します。
- 自分があるのはご先祖様のお陰なので、感謝の気持ちを込めてご位牌を置きます。
以上がお仏壇を置く本来の意味を、簡単にまとめた感じになります。
ご購入や修復の際に疑問が湧いたら、ご参考にされてください。
そもそも宗教って?
ここから先は宗教観の話ですので、
「そもそも宗教って一体なに?」
という、興味のある方はお読みください。
また、このようなことを書く場合のあるあるなのですが、「勧誘ですか?」と思われてしまうと、信頼性が損なわれますので、予め明記しておきますが、宗教の啓蒙活動・勧誘行為ではないので、ご安心を。
その証拠に、筆者自身あまり信仰心は強くありません。
暇なら初詣に行くし、お祭りが好きなので、地元のお祭りに参加しています。
お盆と正月は墓参りになんとなく行って、結婚式は教会式で上げました。
割とよくいる、神・仏・キリストミクスチャーの普通の日本人の宗教観かと思います。
(ちなみに、このような宗教観は、海外では珍しく、日本特有なのだそうです)
強いて言うなら、お仏壇を作っていること・過去に人間関係で悩んだ時に役立ったことから、仏教の「心の管理法」のような、心理学的な要素に興味がある、という程度です。
宗教の意味
極端に言うと、法律以外のモラルやマナーは宗教的な要素である、と言えるかもしれません。
- 「ものを大事にしましょう」というのは神道的な考え方
- 「先祖を大切にしましょう」というのは仏教的な考え方
上記のように、法律では別に決められていないけど、一般的に広まっているモラルやマナーは宗教的な要素が関係していることが多いです。
極論ですが、もし法律以外何をしてもよければ、自分のものを粗末に使っても、親をないがしろにしても、問題はないはずです。
ですが、このような行動が、生きづらい要因になる可能性があり、それを分かりやすい言葉で表しているのが宗教の「格言」や「戒律」になっていることがあります。
また、こんな話もあります。
「あなたはどの宗教を信仰していますか?」
外国の方はそのような質問をすることがあります。
先述したモラルやマナーについての考え方を聞くための、よくある質問です。
「無宗教です」
と答える日本人は多く、日本では割と普通の返しですよね。
しかし、質問してきた外国の方は少し驚いた顔をして、誤解を与えてしまいました。
海外では無宗教者=無神論者という感覚があるそうで、「ちょっとアブナイ人」という印象を与えることがあるそうです。
日本の場合、もともと神道と仏教が共存しているのもあり、また神道も仏教も多神教で「来るもの拒まず」の側面があり、一途にひとつの宗教を信仰しているという感覚がなかったりします。
それが理由で、「無宗派」という感覚があるかもしれません。
ですが、それは無宗教というわけではないんですね。
例えば、小学生が学ぶ道徳の授業は、モラルやマナーの授業だと思いますが、実は宗教的なエッセンスが含まれています。
ちなみに、キリスト系・仏教系の私学や、海外の学校では「宗教」という科目となっているようです。
日本では習慣化によって、意識していないくらい宗教的な行動が普及している、ということですね。
もちろん、日本には国教はなく、信仰の自由があるので、強制力がないにも関わらず、です。
宗教のメリット・デメリット
メリット
- 悩んだ時の対処法など、判断材料になる。脳の負担を減らせる。
- 「生きる意味」などの、答えのない考察方法のロードマップになる。
- 経験論を統計にしたものなので、善悪の判断や基準を教えてもらえる。
デメリット
- 寄付金等の資金が必要になるものもある。
- 多宗教との対立等があるものもある。
- 自由な思想が失われる可能性がある。
デメリットは依存度の問題かと思うので、うまく宗教を自己管理に利用していきたいですね。
宗教って何?まとめ
- 宗教は精神的に豊かになるための方法のひとつです。
- 海外(特に西洋)では、無宗教者であることのデメリットがあります。
- メリット・デメリットがあるので、うまく付き合うとおトクです。
以上の通り。
なるべく中立の立場で執筆していますが、今回の記事は少し自分の考えも入れて具体例としています。
宗教、特に仏教は本来、幸せになるためのメソッドなので、あまり悩まず無理せず、納得の行くかたちにするのが、「仏教流」だと思いますので、是非参考にしてください。
疑問に思った点はお問い合わせ頂ければ、2営業日以内にご返信を心がけています。