【寺院風仕込み壇】造り付け仏壇【仕様・価格も解説】
✓ 本記事の内容
- 造り付け仏壇についてわかる。
- 造り付け仏壇の選び方が分かる。
- 造り付け仏壇を納得して買う方法が分かる。
はじめまして。当記事をご覧いただきありがとうございます。
この記事を書いている僕は仏壇職人歴13年。
これまで、塗師としての実績で、
- 名古屋城本丸御殿の復元
- 静岡市浅間神社などの文化財の修復工事
- マンションの一室に金箔施行
- 大鳥居を出張ウレタン塗装する
など幅広い「現場仕事」の経験をしてきたので、その経験から「現場仕事」が必要になる作り付け仏壇について詳しい解説が出来ると思い、執筆していきます。
造り付け仏壇とは
お仏壇は大きく分けて、「金仏壇」「家具調仏壇」「その他のお仏壇」の3つに分けられます。
本記事では、「その他のお仏壇」に含まれている「造り付け仏壇」にフォーカスして解説します。
参考記事:【種類多すぎ?】お仏壇の選び方まとめ【予算も解説】
なお、造り付け仏壇は産地により色々な呼ばれ方があります。
- 仕込み壇
- 造り込み仏壇
- 造作仏壇
など、様々な呼び方をしますが、全て同じ意味です。
当記事では「造り付け仏壇」としています。
造り付け仏壇の定義
仏間や床の間に、框(かまち)や板を造り付けて、装飾したものが造り付け仏壇です。
デザインはお寺のように、壁を金箔にしたり、框を漆で塗ります。
お寺は「麗し」の別名がある漆や、不浄で価値のある金で装飾され、「極楽浄土」の世界を表現しています。
それを在家に落とし込み、仏間や床の間のスペースをフルに使って表現したものが造り付け仏壇というわけですね。
*造り付けなので、移動が難しいことも特徴です。
- 素材:ヒノキやスギなどの建材。適材適所で合板やMDFが使われる。
- 塗装:漆や漆の代用であるカシュー・ウレタン
- 加飾:蒔絵、金箔、彩色などの伝統的な加飾方法
- 金具:銅や真鍮製の錺金具
上記の要素が含まれます。
金仏壇と比較してパーツは大きくなりますが、構造はシンプルになることが多いです。
手短に言うと、ご本尊や仏具を飾るための「ひな壇」のようなものを造り付けるイメージですね。
造り付け仏壇の種類
サイズ
造り付け仏壇はオーダーメイドになるので自由な大きさで作ることが可能です。
一間(柱芯〜柱芯が約180cm)の仏間に作ることも出来ますし、床の間の半分のスペースに作ったり出来ます。
造り付け仏壇の宗派
シンプルなひな壇構造の造り付け仏壇の場合、宗派はあまり関係ありません。
ご本尊や仏具は宗派ごとに違いがありますが、それらを置くためのひな壇には、宗派による違いがないから、ですね。
欄間や障子を取り付けたり、屋根を入れる場合は、宗派による違いがあるので、見ておきましょう。
宗派ごとのお仏壇のデザインの違いは、大きく分けて3つに分かれます。
- 浄土真宗本願寺派(お西)
- 浄土真宗大谷派(お東)
- 浄土真宗以外
本願寺派(お西)の特徴
- 金箔の箇所が多い(障子・長押・段見附)
- 屋根が、藁葺き屋根であること
- 本山寺院の彫刻は「獅子牡丹」
大谷派(お東)の特徴
- 障子は変わり塗りが多い(本山寺院の障子は梨地塗り)
- 屋根が、瓦屋根であること
- 本山寺院の彫刻は「雲中天人」
浄土真宗以外の特徴
- 金箔が抑え気味(胴板、中柱、障子の組子、屋根が金箔ではない)
- 須弥壇(屋根)の形状が特殊
- 障子の形状が特殊
お寺は一軒一軒細かなデザインが違いますし、お寺をお手本に製作されるお仏壇も産地や製造屋によって創意工夫があり、違いはあるのですが、大きく分けると以上の3パターンになります。
造り付け仏壇のメリット・デメリット
造り付け仏壇のメリット
- スペースを最大限活用でき、毎日のお参り、メンテナンスがしやすい
- 大きなスペースを確保出来るので、大きいご本尊や位牌などの仏具が配置できる
- 設計が自由なので、仕様と予算を幅広く選択できる
造り付け仏壇のデメリット
- 移動が難しい。
- 修復が専門業者(現場施工できる職人)しか出来ない。
- 建物と直結するので、地震や水害の影響を受けやすい
造り付け仏壇の選び方
業者選び
造り付け仏壇を選ぶ際は、業者選びが最重要です。
原則オーダーメイドになるので、業者によって仕上がりと価格が違い、満足度に大きく差が出ます。
不慣れな業者に依頼すると、余計なマージンがかかったり、要望がうまく伝達されないことがあり、満足度の低下に繋がります。
造り付け仏壇のメイン工程は「木地」「塗装」なので、そのような製造を行っている業者や、現場施工が得意な業者に依頼すると満足度の向上に貢献すると思います。
仏具の配置
造り付け仏壇はひな壇型になります。
何のひな壇かというとご本尊や位牌・仏具を配置するためのひな壇です。
飾り方は宗派ごとに違いがあるので、見ておきましょう。
詳しくは:【仏具・お供え】お仏壇の飾り方まとめ【各宗派のルール】
上記を参考に、必要な仏具がキレイに並び、毎日のお参りがしやすいような造りがベストです。
また、屋根(宮殿)を置くかどうか、悩むケースが多いです。
お寺のデザインをお手本にするので、宮殿を入れると、一気にそれらしくなります。
宮殿を入れるかどうかで予算が大きく変わりますし、ご本尊の大きさを選ぶ場合にも影響しますので、ご本尊や予算に合わせて選択しましょう。
ご本尊については以下の記事で詳しく解説しています。
詳しくは:【仏像?掛け軸?】お仏壇のご本尊まとめ【仏様はお仏壇の主役です】
価格と仕様
最後に価格と仕様ですが、造り付け仏壇は素材と仕上げに上限がないという性質があります。
予算に上限がない、という場合は大丈夫ですが、そうでない場合はこだわりたいところと、おおよその予算のバランスを取りましょう。
工程 | 高級 > 安価 |
---|---|
木地 | 国産無垢 > 合板 > MDF |
屋根 | 宮殿 > 宮殿御坊 > なし |
天井 | 本二重 > 二重繰り上げ > なし |
塗り | 漆塗り呂色仕上げ > 漆塗り立て > 総カシュー |
金具 | 本地彫り > 手打ち・電鋳(電気鋳造) > プレス金具 > なし |
蒔絵 | 磨き蒔絵 > 高蒔絵(立体感がある) > 平蒔絵 > なし |
箔置き | 漆押し > カシュー・ウレタン押し |
金箔 | 1号 > 2号 > 3号 > 4号 縁付き > 断ち切り |
基本的に、表の左側の素材・仕上げほど、高級です。
いろいろな組み合わせがあり、それにより価格が決まりますので、見積りをお願いすると比較しやすいと思います。
記事のまとめ
- 造り付け仏壇とは仏間や床の間に、框(かまち)や板を造り付けて、装飾したものです
- スペースを大きく取れること、設計や仏具などの装飾の自由度が高いのがメリットです。
- 移動が難しいこと、修復が専門業者しかできないことがデメリットです。
- オーダーメイドのため、製造力のある業者に依頼するのがオススメです。
- 造り込み仏壇自体以外に、必要なご本尊・位牌・仏具を把握して、トータルの予算を見積もりましょう。
上記が記事のまとめです。
造り込み仏壇は地域によってはメジャーな場合もありますが、全国的に見ると珍しいお仏壇になります。
個人的な意見ですが、スペースが有効活用でき、使いやすいこと・お仏壇の主役であるご本尊や仏具がより引き立つことなど、大きなメリットがあると思います。 移動が難しいことなどのデメリットさえ納得できたら、満足度の高いものになる可能性を秘めているお仏壇だと思います。
最後に、宣伝ですが、マルスエ佛壇では全国の造り付け仏壇のご要望を受け付けております。
気になった方は、お気軽にお問い合わせくださいませ。